当たり前のことだけれど、高層マンションでの暮らしは快適そのもの。
どれだけ登生が騒いでも気にする必要もないし、対面カウンターになっているキッチンでは登生の様子を見ながら料理もできる。
しいて言うならば、高そうな家具たちを登生が汚したり壊したりしないかが心配だけど、そんなことを口にすれば「すべて買い替えようか?」と言われそうで黙ることにした。

「登生って、普段何で遊ぶんだ?」

土曜日の朝。
朝食を食べながらいきなり聞かれた質問に、意味が分からず首を傾げる。

「何で遊ぶって?」
どういう意味だろう。

「荷物の中に登生もおもちゃがあまりなかったから」

ああ、なるほど。
確かに登生のおもちゃはあまり多くない。
あの狭いワンルームにはそれが精一杯だったし、昼間は保育園に行っているから困ることもなかった。
それに、私自身もそんなにたくさんのおもちゃを与えられた覚えはない。

「淳之介さんの子供の頃って、そんなにたくさんのおもちゃがあったんですか?」
「そうだね。この部屋よりも大きなところを遊ぶための部屋にしてもらって、おもちゃであふれさせていた。俺は電車や飛行機の乗り物が好きだったし、弟は動物が好きでそれぞれのおもちゃで足の踏み場もなかったな」
とても懐かしそうで、寂しそうな顔。

「登生も乗り物好きです。パトカーや消防車を見るとはしゃぎますから。それに、海の生き物が好きですね」
「ふーん」

イルカやクジラ、ラッコなんかを見るとテレビの前から離れない。
一度アジの塩焼きを食事に出したら大泣きされて、それ以降魚は切り身しか出さないことにしている。