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ゲストルームにはベットと小さな机があるだけ。
そこに淳之介さんと押し込まれ、仕方なく2人でベットに腰かけた。

「怒っていたわね」
「ああ」

言葉にも態度にも怒りがこもっていた。
一見穏やかそうな淑女が怒ると一段と怖いんだなって、メグさんを見て実感した。

「私たちが登生の前で喧嘩したから、だから怒ったのよね」
「そうだな」
「登生の前では喧嘩をしないって、約束だったのにね」
「ああ」

淳之介さんも登生の前で喧嘩してしまったことに落ち込んでいるようだ。
確かに、大人としての配慮が足りなかったと思う。
でも、あの状況では黙っていられるはずがない。
淳之介さんの言うことはちぐはぐすぎるんだもの。

「なあ璃子、俺の話を聞いてくれないか?」

さすがにこのままでいる訳にもいかずどうしたものかと困っていると、淳之介さんがまじめな声で話しかけてきた。

「わかりました、聞くわ」
すべて話してしまったからには何でも聞いてあげる。もう逃げない。

並んで座っている体勢から、少し向き合って私が淳之介さんの方を向いた。
淳之介さんも私の顔をまっすぐに見ながら、ゆっくりと話し出した。