「まーだ起きてたの?消灯時間を守らない部屋は今日も健在ね」



コンコン───。

そんなノックを響かせれば勝手に入っていいというルールではない。

ここはれっきとした年頃の女子高生が入院している病室なのだから。


ビクゥッと揺れた肩を瞬時に戻して、手にしていたスマートフォンをベッド脇に伏せて平常心のふり。



「ちょ、ちょっと調べものがあって…!胡桃(くるみ)ちゃんもあるでしょ?
ほら夜のほうが頭回ったりしない?テレビでもやってたよ?」


「ずいぶんと饒舌になっちゃって。なにを隠してるのかなぁ~?」


「いや?なにもっ!!」



そんな女子高生の病室に簡単に入って来れてしまうのは、主治医であり女医だからという理由がひとつ。

もうひとつは、ここ最近になってお互いの距離感が姉妹のようなものへと変わったからだった。



「もう少ししたら寝るからっ!ここは見逃して胡桃ちゃん!」


「…胡桃ちゃんって、私はもう32よ?ななせちゃん」


「だってかわいい苗字だから、そう呼びたいんだもん」



胡桃 恵梨香(くるみ えりか)。

主治医である彼女は、あの日からスマートフォンを触る頻度が増えた私をどこか探っているようだった。