彼女は、学生時代の兄を見ているようだった。

 なんでも完璧で、友だちもいる人気者。自分とは、まるで正反対。

 だからつい、エリオットは的外れだと自覚しながらも、恨みがましい気持ちで彼女を睨んでしまった。

 キャッキャと楽しげに笑いながら去っていく背中を見たのは、ほんの一瞬のこと。

 エリオットはすぐに、なにを馬鹿なことをしているのだと目を閉じた。

「どうしたの、シュエット?」

「ちょっと、視線を感じて……でも勘違いだったみたい」

 遠くから聞こえる声に、エリオットはギクリとした。

 たった一瞬の視線を、まさか気付かれるなんて思ってもみなかったからだ。