小さな寝息を立てて腕の中で眠ってしまったシュエットを、エリオットは慎重な手つきでベッドに寝かせた。

 寝心地の良い体勢を探して、シュエットがころりと横向きになる。彼女のまろやかな額に、前髪がハラリと覆い被さった。

 エリオットはそっと髪を払い、額に唇を寄せる。

 ごく自然な流れでキスを落とし、「夜の小鳥があなたにすてきな夢を連れてきますように」とささやいた。

 それは、隣国エトラに伝わる、おやすみのおまじない。

 無意識にやったことだったが、誰よりもエリオット自身が驚いた。

「なんだ、覚えているではないか」

 不意打ちのように背後から声をかけられて、エリオットはビクリと体を震わせた。

 振り向けば、そこに幼女が立っている。