シュエットがエリオットを連れてきたその日の夕方、パングワンはいつものように執務室にいた。

 午後は読書か刺繍の時間と決めているはずのシーニュは、ひかえめにドアをノックしながら「あなた、お話があります」とかたい声で話しかける。

「シーニュか。構わない、入りなさい」

 緑色を基調とした落ち着いた雰囲気の執務室。一番奥にある執務机に、パングワンはいた。

 机の上には帳簿が広げられているが、彼は仕事をしていたわけではないらしい。帳簿の上に腕組みをして、深く考え込んでいるような姿勢をとっていた。

「話がありますの。シュエットのことですわ」

 難しい顔をして、パングワンは開きっぱなしだった帳簿を閉じた。

 パタン、と帳簿を閉じる音が、やけに耳に響く。