「大事な話があるの」

 娘が男連れで帰宅するなりそんなことを言うとなれば、恋人の紹介か、婚約の報告と相場が決まっている。

 シュエットの父、パングワン・ミリーレデルは、応接室の椅子にどっしりと腰掛けて、ミリーレデル商會のトップらしい貫禄を見せつけていた。

 彼の辞書からは、都合よく『大人げない』という言葉が削除されているようである。

 センターテーブルを挟んだ向かいのソファには、愛する娘と、彼女が連れてきた男が座っている。

 しっかり者のシュエットが選んだとは到底思えない、おどおどした男。娘はこんな男に騙されたのかと、パングワンは怒りのままに男を睨んだ。

 視線が刃になる魔術があったなら、真っ二つにしてやるものを。

 そんな気持ちを込めた鋭利な視線に、シュエットの隣にいる男──エリオットはビクリと肩を震わせた。