エリオットはなかなか寝付けなかった。

 まるで同居初日のように、目が冴えている。

 同居を始めて三日くらいは、衝立の向こうに好きな女性が無防備に寝ているということに興奮してしまい、なかなか寝付けなかった。

 三日目にして睡眠不足がたたり、気絶するように眠ってからは、おとなしく寝られるようになったのに。

「眠れない」

 原因はわかっている。昼間のことが、頭から離れないからだ。

 ダイニングの端に置かせてもらった簡易ベッドの上へ横になったまま、仰向けで天井を眺める。深い青色をした天井に、思い浮かぶのはシュエットの顔だ。

 ランチ用の紅茶を淹れるためにいた、簡易キッチンからこっそりのぞいた彼女の横顔は、憂いに満ちていた。ふぅ、とため息を吐く姿は弱々しくて、思わず後ろから抱きしめたくなる。

 普段の彼女はしっかりしているだけに、エリオットの庇護欲がムクムクと湧き上がった。