次の日の朝。

 目が覚めたわたしの頭の中で、やっぱり、あの歌がずっと流れている。
 繰り返し、繰り返し、同じフレーズがレコードのようにかかっている。

 はじめて聴いた曲なのに……。
 それだけ、わたしの好みに合った曲だったってことなのかな。

 この感じは――昔、母が昔歌っていた曲を聴いたときと、似ているかもしれない。

「この曲はね、昔のスタンダートジャスなのよ。おしゃれでステキな曲でしょう?」

 そういって、母はゆったりとしたスピードで、フライミートゥーザムーンを口ずさんだ。

 幼かったわたしでも、その曲のおしゃれさ、ステキさは伝わっていた。
 短いフレーズしか歌わない母に、わたしはきらきらと目を輝かせながら、もっと続きを歌ってと、まとわりついた。