十月半ば。
 運動音痴にとって、体育祭は楽しくない行事のひとつだ。

 あっという間に、校内は体育祭一色となっていた。
 生徒会長の蒼くんいわく、生徒会の体育委員が中心になって体育祭を盛りあげるそうだ。
 ほかの役員は、サポート役らしい。

 放課後、家まで送ってくれる帰り道で、自転車を押しながら蒼くんは聞いてきた。

「ねえ菜花ちゃん。体育祭で、どの競技に出るか決まった?」
「うん。借り物競争だけ。わたし、走るのが苦手で。借り物競争なら、ただ走るだけじゃなくて違う要素があるから、足が遅いのも目立たないかなって」

 照れながら、わたしは答える。