今回の出張は大規模食品イベントの視察と商談への参加だ。

一成さんは大学で応用生命学を学んでいたそうで、入社してしばらくは開発部で商品研究や開発にも携わっていたらしい。
だから今も開発部の新人発表会に積極的に参加して意見交換をしているのだとか。

京都で行われる食品イベントには営業部と開発部のメンバーが数人参加することになっている。
全員で一緒に行くわけではなく現地集合だ。
とはいえ、私と一成さんは駅で待ち合わせて同じ新幹線に乗るのだけど。

仕事なのに妙にウキウキしてしまって昨日はなかなか寝付けなかった。
我ながらまるで遠足前の子供みたいだ。

一成さんと一緒に出張。
しかも遠出。
ああ、まさかこんな日が来ようとは夢にも思わなかった。

今日の一成さんもビシッとスーツを着こなし麗しいオーラを放っている。

眼福とはまさにこのこと。
隣に並べるのが嬉しくてたまらない。

気合いを入れてメイクも少し大人っぽくしてみた。

夏菜や時東さんに煽られたりしたせいで、私の中の一成さんに対する気持ちも変わったのかもしれない。
やっぱり好きな人には綺麗だと見られたいし、少しでも私に興味を持ってもらいたい。

「新幹線なんて久しぶりに乗ります!」

「子供みたいなはしゃぎっぷりだな」

一成さんはクククと押し殺した笑いをする。

大人っぽい作戦は早々に敗北に終わった。
やはりメイクだけではダメみたいだ。