あれから毎日一成さんと二階のカフェで朝食をとることが日課になった。

早く来ることは苦ではないし、なにより一成さんとこうしてお茶を飲みながらたわいもない話ができるのがとても嬉しい。

ただ、支払いが毎回一成さんなので、その点は心苦しいのだけど。そこはどうしても譲ってくれないのだ。

仕方がないのでこれも業務の一貫と思って割りきることにした。

コーヒーの種類や紅茶、そしてたまにお茶漬けなど、いろいろなパターンを試している。
改めて塚本屋のスケールの大きさを思い知ると同時に、自分なりにお茶の知識を深めようと努力しているのだ。

いつだか夏菜が言っていた。

「お兄に餌付けされてない?」

今なら思い切り首を縦に振る。
私、餌付けされている自覚がある。
でもそれが嫌じゃなくて心地いい。

思わぬ形で一成さんの側にいることができるこのご縁に、改めて感謝だ。

「千咲、今日は来客が立て込んでいたはずだから、よろしく頼む」

「はい、わかりました」

一成さんの言うとおり、今日は午前も午後も来客で予定がつまっている。

お迎えに上がり会議室へご案内し一成さんに声をかけ呈茶を出す。そして合間にメールの確認。とにかく息つく暇もない。
そんな時に限って電話対応も多く、目が回る忙しさに頭を抱えたくなった。

だけど仕事にも慣れてきたのだろうか。自分なりになんとかこなせている気がする。

一成さんとは朝のカフェで顔を会わせているものの、それ以外の時間帯で一緒に仕事をすることはない。

それもそのはず、一成さんは副社長なので多忙を極めるのだ。
私はそんな一成さんをサポートする秘書。足手まといにならないように業務をこなす。一成さんの仕事に対する真剣な表情はまさに眼福だ。