現在、時刻は22時を回ったところ。
街を歩く人々も、濃いグレーの舗道をコツコツと踏みながら、足早に通り過ぎて行く。

空気が纏わりつくように重い。
もう7月も中旬だというのに、小糠雨が街を薄いベールに包んでいる。
汗がじわりと肌に浮かび上がり、不快指数はMAXレベル。

こんな日は気持ちも重くなる。
上司の嫌味には慣れっこになってきた私でも、さすがにぐちぐちと何度も繰り返される小言に今日は心がポキッと音を立てた。

そして今、私は疲れた心と身体を抱えて、古びた木造の扉に手を掛けた。