その話が出たのは、わたしが朝顔に入り浸って半年くらい経った頃のことだった。

きっかけは、兼のとある一言。



「みんな、進路希望調査とかもう出した?

俺まだどこにするか決まってねえんだけど!」



成績不振や髪色での素行不良。

しっかり教師に目をつけられているらしい兼は、進路希望でも追い打ちをかけられているようで。A4サイズのそれをぴらぴらとわたしたちに見せつけながら泣き真似。



「どこって、(はい)高一択でしょ」



「ハルも灰高でだしたよぉ」



「俺も灰高で出してんで。静もやんな?

なんで逆にお前は灰高で出してへんねん」



灰崎高校、通称灰高。

簡単に言えば朝顔が存在する北連合の関係者が最も多く集う高校であり、東さん率いる6代目も全員が灰高。つまりほかの学校に行く気がない限り、相談することもないはずなのだけれど。




「なんかたまには違うことしたくね!?

ってかその感じ、雫ちゃんも灰高行くの!?」



「ああ、雫は()高行く」



「……え?」



越の一言に、兼が固まる。

兼だけじゃなく、ハルちゃんも鼓も。普段感情を表に出すことの無い静でさえ、驚いたように目を見張っていた。



「え……、え?」



「だから雫は美高。

いくらなんでも評判の悪い灰高はリスク高いでしょ」



「や、そうやねんけどそうやないんよ。

美高って……南やで?」