「っ、ふ……、」



もう何度キスされたのか分からない。

越が一度シャワーを浴びに行って、その間にやっと髪を乾かして、それから。



「もうちょっと口開けて、雫」



ふたりで越の部屋に行ったら、ベッドの上で抱きしめられて。

そのまま流れるようにキスされて、押し倒されて。



覆い被さるようにしてキスされてるから、逃げ場がない。

深すぎるくちづけに呼吸が苦しくて、胸を押し返して限界を告げたら、「下手くそ」って言われた。



「鼻で息吸えるでしょ?

何のためにその鼻ついてんの。飾り?」



そして越は相手に対して遠慮がない。

言葉が結構ぐさぐさ刺さることが多くて、メンタルの弱いわたしにとっては一番苦手なタイプ。




……の、はずなのに。

どうして、好きだと思っちゃったんだろう。



「ほら、もっかい。鼻で息吸う練習しなよ」



……練習って。

まるで何かのトレーニングかのような口ぶりに言い返したくなるけれど、その前に塞がれて声が出てこない。



「んっ、んー……っ」



「ムードの欠片もないな……」



投げ出していた腕を、越の首に回す。

くすっと笑った越がわたしの後頭部を引き寄せるからお互いに身体が密着して、余計にキスが深くなった。



「ちゃんと可愛いことできるじゃん」