◆ side快斗



彼岸花7代目が、姫就任を宣言してから1週間。

北側から狙われているという話も特に聞かねーし、彼岸花は至って平和。まつりの目がある以上、女たちも特に雫に手を出すことはできねーし。



「オメー、馴染みすぎてね?」



いつものように4限終わり、双治に旧図書室まで送ってもらった雫。

メシ食う前に机の上拭いてくれてるし、ここ最近はメシ食った後に部屋ん中掃除してくれてるし。



もはや今までも居たんじゃねーかと思うぐらい、俺らに馴染みすぎてる。

最初の宣言以降倉庫には来てねーけど、幹部室にいないと何故か落ち着かない時があるレベル。



いるのが当たり前になりすぎてる。



「……ちょっとおこがましすぎ?」



俺の言葉をどう受け取ったのか、見当違いなそれに「ちげーよ」と否定して。

雫の手から、机を拭き終えたウエットティッシュを奪って丸め、ゴミ箱へと放り投げる。……あ、やべ、外れた。




「快斗、投げるなら入れてくれるかしら?」



「俺だって外すとは思ってなかったっつーの」



「仕事増やすんじゃないわよ」



「お前そんな責任感持ってやってんの?」



落ちたそれを拾い上げて、ゴミ箱に入れ直す雫。

その目は涼しげで、何考えてるのか分かんねー。



「この部屋の掃除はただの趣味よ」



「……ヘンな女だな」