「ねえ、越」



「……何やってんの?」



美しくて細い、しなやかなその身体に腕を回す。

制服を着ている彼は、帰宅するなり着替えようとしているのだけれど、後ろからそれを完全に邪魔しているわたし。



「越に触れたくなっちゃったの」



言えば、ため息を漏らす彼。

その背中に顔を押し付けていれば、「ちょっとだけ離して」と彼はわたしを宥める。



「すぐに済むから」



子どもをあやすような声に、手を離す。

実際、「いい子」と深い声色で言われたあたり、本当に子ども扱いなんだろう。ブレザーを脱いでクローゼットに収めた越が、そのまま気だるそうにネクタイを外した。




……っ、なにその色気。

後ろから見ててもドキドキするんですけど。そんなの、中学生が出せる色気じゃなくない??



「で、なに? 触りたいって?」



「……うん」



シャツはそのままで振り返った越が、わたしに向かって軽く腕を広げる。

お好きにどうぞ、の意思表示のそれに、越の首に腕を回して抱きついた。



「なんか嫌なことでもあった?」



優しく抱き寄せてくれる越。

髪をくしゃっと撫でられて、ふるふると首を横に振るけれど。



「雫が急に家に行きたいって言い出すなんて変でしょ。

……話くらいは聞いてあげてもいいよ」