貴一と出会ったのは、中学に入学する直前。

いつもより暖かな3月の日曜、私は庭に水を撒いていた。

穏やかな春の日差しが心地よかったので、オリビア・ニュートンジョンを口ずさんでいると、

「あら、ずいぶん歌の上手いお嬢さんね」

「そうだな。しかも英語の発音も素晴らしいな」

そんな声に驚き、振り返ると、うちの両親よりだいぶん若い夫婦と、私と同じぐらいの年齢の少年がそこに居た。

「あの、えっと…」

私が思わず戸惑っていると、

「ああ!申し遅れました。隣に越してきた後藤といいます。御両親はいらっしゃるかな?」

「はい、お待ちください」

歌、聞かれてたのか…恥ずかしいと思い、急いで両親を呼びに戻った。