10代で両親の死を経験している私は、この先、もうそこまで衝撃的なことはないだろうと思っていた。

しかし、私の人生をガラリと変える出来事は、やはり突然起こった…。


その日は、仕事が休みだったので、思い切りカラオケを楽しんで帰宅したのだが…自宅の敷地に一歩入った瞬間、あり得ない光景に、私の思考はおかしくなる。

何故、うちの庭にベビーカーが…?

恐る恐る近付くと、ベビーカーでは赤ん坊が眠っている。

明らかに異様な光景だが、静かに眠っていたので、誰にも気付かれることがなかったのだろうか。

赤ん坊のお腹のあたりに、時代錯誤も甚だしい丸文字で「違書」と書かれた封筒があったので、そっと手に取る。

こんな意味不明な状況にも関わらず「遺書」の「遺」の字が「違」になっていることに一瞬で気付き、国語の成績は悪そうだな…などと冷静に考えている自分が不思議だ。

裏には「柴田理恵」と書かれてあるので、何かのイタズラではないかと思ってしまうが、自分も名前のことで、大人たちにあれこれ言われたので、あまりそういうことは思ってはいけない…と、心のなかで打ち消す。

柴田理恵なんて、いくらでも同姓同名のいる名前だ。

しかし、私に柴田理恵という名の知人はいない。

何だか怖い気もするが、剃刀が入っていないか気を付けながら、手紙を開封してみた。