「どっか行くの……?」


少し焦りながら彼の背後に立つ。


「おー、出てくわ」


一瞬、カヤの言っていることが理解できなかった。


出て行く……?


「一晩止めてもらってありがとーな」


カヤは、私に笑いかけた。


「サングラスとか持ってねぇ?このまま出た
 ら色々まずいんだよな」


そうつぶやきながら、カヤは靴を履き始める。


「帰るとこ、あるの」


なんで……。


昨日まではずっと、早く帰ってくんないかな、なんて思ってたくせに。


なんで……。


……なんで、今になって、帰ってほしくないなんて思ってるんだろう。


「まあホテルとか、てきとーに」


ホテルなんて、絶対嘘だ。


ホテルに泊まれるのなら、昨日あんなところに倒れてなかったでしょ。