「ふっ……うぅ……うわぁぁ……」




部屋には、私の嗚咽が響く。




午前3時。



カヤは、ニューヨークへと旅立ってしまった。



それからというもの、涙は止まりやしない。



「カヤぁ……」



ずっと名前を呼び続けていると、やれやれと言ったように、キッチンの方からため息が聞こえた。



「はぁ……いい加減泣き止んでくださいよ」



そう言って、簡単な料理を作って机の上に置いてくれたのは、月くん。



カヤの弟なんだ。



金髪で少し怖いイメージだけど、実はとっても優しいの。




でも……。



でも……寂しいものは寂しいんだもん……。



「もうカヤに会えないぃ……」


「会えますよ頭大丈夫ですか?」



相変わらず辛口な月くんの存在は、今ではありがたい。



「心配しなくても飛行機は墜落しませんし兄貴死にません」



「そういう心配してるんじゃないの!」



泣きすぎて目が腫れてるんだろうな、そんなこと今は気にしてられなくて。



カヤにしばらく会えないことばかりが頭を埋め尽くした。



「ほら、そんな泣いたら近所迷惑です。今何時かわかってるんすか?」



「うぅ……3時……」



「……はあ。……こんなこともあろうかと兄貴の卒業アルバム持ってきたんですけど」



見ます?そう言って、ニヤリと笑った月くん。



その瞬間、涙なんて吹っ飛んだ。



月くんの持っている卒業アルバムに飛びつく。



「……わあ」



1ページ目をめくると、そこには、少し幼いカヤの姿があった。



高校時代なのかな、それだったら、きっと写真の中のカヤは高校1年生。



体育祭の写真。



文化祭の写真。



なにげない昼休みや、授業中の写真。



どれも、いちばんにカヤを見つけられるの。



「あ……」



と、目についた写真。



「これは……?」



カヤが、女子に囲まれて今にも押しつぶされそうになっている写真。



相変わらず少し不機嫌そうな顔つき。



「あぁ、それ多分バレンタインっすね。兄貴、毎年すげえ量のチョコ持って帰ってきてたんですよ」



まあ全部俺が食ったけど、なんて言いながらスマホを触る月くん。



そっか……。



高校時代からすっごくかっこいいんだもん。



モテないわけがないよね。



少し、胸の奥がモヤっとした。



みんな、この写真の中にいる人たちは、私の知らないカヤを知ってるんだよね。



そう思うと、羨ましくて仕方がなかった。



「うぅ……なんか辛くなってきた……」



「え……なんでっすか」



「私もカヤと同じ年齢がよかった……っ」



ドバーッと溢れる涙。



困り顔の月くんを見たのを最後に、私の意識は途切れた___……。