カヤside

「……ただいま」



静かに玄関の扉を開ける。



家の中が真っ暗だ。



嫌な予感を感じ取りながらもくるみを探す。



あぁ、俺……ダメだな。



あの時のくるみのショックを受けたような……絶望したような表情が頭からこびりついて離れない。



違う、由榴とは付き合ってない。



そう言いたかった。



なのに……。



なのに……!



そんなところまで気が回らなかった俺が悪いんだ。



とにかく、くるみに俺の過去を知られたりしたらどうしよう。その気持ちの方が勝った。



何してるんだ。



そう思いながら寝室の扉を開けると、ベッドの方からかすかな寝息が聞こえてきた。



少しの安堵。



頭の中のどこかでくるみが出ていったりしたらどうしようって、不安だったんだ……。



くるみを起こさないようにベッドに腰掛ける。



電気を消し忘れたのか、明るいままの部屋。



ハッとした。



……泣いた跡。



目尻の横に少しの水滴。



ずっとずっとーー……。



俺が……。



……泣かせてたーー……。