カヤside




くるみは静かに眠り始めた。



「……兄貴」



わかってた。



いずれこうやって……弟の月と話さなきゃいけないことは最初からわかってた。



俺が勝手に家捨てたんだ、当たり前だろう。



「説明、しろよ」



月が静かにつぶやく。



その声はどこか怒りを含んでいた。



「……勝手に家出てごめん」



「……」



月は何も言わなかった。



「俺が家出たのは夢があったから……それが、今だよ」



「……今?」



「俺……ずっと俳優になりたかった」



幼い頃から持っていた大きな夢。



そんなのなれるはずないよって何度も言い聞かせられてきた。



だから。



だからこそなりたかったんだ。



誰もがなれないと諦めきっている夢を……自分で叶えたかった。



「俺の家は貧乏だし学費だけで精一杯。だから働こうって思ったんだよ」



「っ、だからって勝手に家出てもいいのかよーー」



「んなことわかってるっつの」



思わず身を乗り出す月の言葉を遮り、話を続ける。