「えっ、…転勤?」


もうすぐ春休みに入ろうとする頃、突然お父さんから告げられた転勤の話。


お父さんの仕事柄、転勤は付きもの。

これまでも、わたしが生まれてすぐと、小学校に上がる前、小学5年生のときと、すでに3回も転勤で引っ越ししている。


だから、とくに驚きはしない。

だけど、今回の転勤先はこれまでとは違って、遠いところに移り住まなければならなかった。


…でも。


「…お母さんは、どうするの?」


わたしのお母さんはもともと病弱な体で、今は病院に入院している。

家からだとバスで通える距離だけど、引っ越してしまったら、到底今みたいに気軽に会いに行くことはできない。


「そこで、咲姫(さき)に相談があるんだが…」


お父さんは、春から新しい職場に転勤するように言われたときから決めていた。