春花は以前よりも静のCDを聴く日が多くなった。静のピアノは春花の癒しになっている。むしろ今この音源が失くなってしまったら春花の心は崩れてしまうほどに、脆く壊れやすくなっている。静は心の支えなのだ。

そんな日々の中、また母から転送される形で郵便が届いた。それを目にした瞬間、春花の期待は一気に高まる。

――次も来て

以前、静に掴まれた左手首が急に熱を持つような感覚を覚え、春花ははやる心を抑えながら封を開けた。

ペラリと入っている一枚のチケット。
手紙も何もない、無機質な一枚の紙。

それなのに春花にはずしりと重みを感じるものだ。

「すごいよ、桐谷くん」

ほう、とついた感動のため息は、久しぶりに春花の心を明るくさせた。

静はどんどんと実績を上げ、自分の地位を確立している。そんな静の活躍に感化され、春花もまた、失いかけていた自分の在り方を見直していた。

「私も頑張らなくちゃ」

春花は携帯電話をぐっと握ると、ずっと言い出せずにいた言葉をゆっくりと文字に書き起こした。