昴生さんと結婚して、二週間が過ぎた土曜日。お昼ご飯の後の洗い物をしていると、部屋で電話をしていた昴生さんが後ろから声をかけてきた。


「咲凛、夕方から出かけるぞ」

「わかりました。仕事ですか?」

 キッチンのタオルで手を拭いて振り返ると、昴生さんが呆れ顔で私のことを見てくる。


「違う。お前も一緒にだよ」

「私も? どこに行くんですか?」

「クラッシックのコンサート」

「クラッシック……」

 私にはあまり馴染みのない音楽ジャンルにぽかんとした表情を浮かべると、昴生さんが苦笑いした。


「親父の知り合いの娘さんにN交響楽団の人がいて、チケットを二枚取ってもらったそうなんだが、親父に仕事の予定が入って行けなくなったらしい。チケットを取ってもらったのに席を空けるのは失礼だから、代わりに俺たちが行ってくれって頼まれた」

「でも私、クラッシックとか全然……。チケットが二枚あるなら、昴生さんがお義母さんと行かれたほうがいいんじゃ……」

「母親と行くくらいなら、クラッシックに興味がなくても咲凛のほうがいい」

 昴生さんがそう言って、眉を顰めた。