「うーん、なかなか良いバイトってないなあ」

 午後の教室。

 私は求人誌を読みながら頭を抱えていた。

 私、西塔(さいとう)花帆(かほ)は高校二年生。

 ただ今、バイト探しの真っ最中。

 だけど、バイト情報誌に乗ってるバイトって、たいがい大学生以上って書いてあるんだよね。

 高校生の募集はほとんど無いし、あってもすごく給料が安いの。

「わーん、これじゃあ暮らしていけないよぉ」

 ひとりごとを言いながら立ち上がると、にぶい音がして、雑誌の角が誰かにぶつかった。

「あっ、ごめ……」

 言いかけて絶句する。

「痛ってーな! 雑誌なんて読みながら、立ち上がるんじゃねーよ」

 そこにいたのは、金髪にピアスをした派手な男の子。

 ひゃ、ひゃああっ!

 クラスメイトの毒舌王子、卯月(うづき)秋葉(あきは)くんだ!

「ご、ごめんなさいっ!」

 私は頭を下げると、逃げるようにして教室を出た。