放課後。生徒たちが下校した教室に残り、提出された課題に目を通す。

 高校三年生ともなると、受験に重きを置くあまり課題提出をスルーする子も目立つ。



「提出はしても答え丸写しとか、バレバレ。少しは気を使いなさいよ」




 赤点スレスレの生徒への救済処置として、出したくもない課題を出してるのに。なんて思いながら溜め息をついた。




「こっちだって好きで残業したい訳じゃないのになぁ」


「……なら帰っちゃえば?」




 声がかけられ、教室の出入口付近へ視線を向ける。そこには、我先にと下校したはずの檜山くんが立っていた。




「びっくりした。檜山くん、帰ったんじゃなかったの?」


「忘れもの取りにきた」


「そうなんだ?」


「うん」




 教室に忘れ物を取りに来たという檜山くんは、ロッカーへ向かい丸めたジャージを取り出している。そんな檜山くんを目で追っていたわたしの視線に気づいたのか、いつものように檜山くんが私をからかい始めた。




「先生、さ」


「ん?」


「彼氏いる?」


「なに、急に。……いないけど」


「じゃあさ……好きな男は、いる?」