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“Bar Ortensia（オルテンシア）”
　灯りを落とした大人の雰囲気が漂う素敵なお店だ。

　私がこのバーを訪れるのは、一年に一度、この日のみ。
　特別な日のための、特別な場所になっている。

　カウンター席の一番奥に陣取り、注文したシャンパンカクテルを味わう。
　限定メニューだというから頼んでみたものの、この飲み物がおいしいかどうか、私にはいまいち判断できない。
　とはいえ店員の前で眉をひそめることもできず、澄ました顔でそれを口に含んでいる。

　今日はここで待ち合わせをしているわけではない。
　でも、来るか来ないかわからない相手を、実は心のどこかで待っている自覚はある。

　ちなみに昨年は来た。一昨年も。

　その人のためではないが、今年の秋にデート用に買ったマキシスカートとブーツをはいてきた。
　今日くらいはオシャレをしたくて。