「おいしい」
「だろ」
私が気にすることなく食べている様がよほどうれしいのか、キースは今まで以上に上機嫌だ。
「グレンたちが行くような店じゃなくてすまない。俺はこういう方が本当は好きなんだ。だから一度、ソフィアにも食べてもらいたかったんだ」
「私もかしこまった店より、こういう方のが手軽ですし、何も考えなくてもいいので好きですよ」
「氷の美姫の意外な一面を俺だけが知っているというのは、悪くないもんだな」
「前から聞こうと思っていたんですが、氷の美姫って何なのですか?」
キースが何度か繰り返している、私の二つ名。
私が知っているものは、氷の姫君という私が笑わないことを揶揄されたものだ。
それなのに、いつの間にそんな訳の分からないものにすり替わっているなんて。
「前からいろんな貴族が噂していた君の二つ名だよ。氷のように冷たく見えて、その実優しく、孤高で美しいという」
「いえいえ、私が知っているのはただの氷の姫君でしたよ。笑わないし、誰に対しても冷たいっていう」
なんとなく似ているようで、少し違う二つ名。
捉える人によって印象が違うとか、そんな感じのものなのかな。でも、それにしては……。