「こんなにいっぱい。食べきれなくないですか?」
「いや、俺はこれでも足りないと思うんだが」
すでに食べ物だけで、三種類を二個ずつ、飲み物も二本ある状態だ。
これ以上はさすがに無理がある。
「絶対に足ります。もし足りなかったら、あとで追加すればいいと思いますけど」
「んー。ま、そうだな。とにかくあっちで座って食べよう」
子どものような無邪気な笑顔に、私もつられて笑う。
キースといると、自然に笑顔が作れている気がする。
そう私……、今楽しいんだ。まるで出来なかった子ども時代をもう一度やり直しているようで。
「さあ、こちらへどうぞ」
荷物をベンチに置いたキースは自分のハンカチを取り出し、ベンチの上に敷いた。
私は言われるまま座ると、手に持っていたジュースをキースが一本受け取る。
そしてその代わりとして、トレーに乗せられた串焼きを一本差し出した。
令嬢としてかぶりつくのはどうだろうと考えていると、隣でキースがそんなことなど気にせずに食べ始める。
王族が気にしないのだから、まあいいかと、私も普通に食べ始めた。
何の肉かは分からないそれは、塩がよく効いて、しかも柔らかい。
滴り落ちてくる肉汁に気を付けなければ、新しい服が台無しだ。
しかしそんなコトすら忘れてしまうほど、濃厚で美味しい。
もしかすると、この世界に来て一番美味しい食べ物かもしれない。