暖かなというより、やや汗ばむような強い日差しが降り注いでいる。

 しかし本格的な夏とは違い、吹き抜ける風は涼しい。

 街の中心部の裏手にて馬車を降りると、この前来た露天の方へキースと共に歩き出す。

 キースは勝手知ったるというように、前に母たちとリンゴを買った露天の並ぶ広場へ。

 この前より時間が遅いせいか、広場には何かを焼く香ばしい匂いや、その場で食べられる軽食を取り扱う店が多く思える。

「ソフィアは、嫌いなものはある?」

「いいえ、特にはないです」

 食べたことも見たこともないそれらが並ぶさまは、まるでお祭りのようだ。

 お祭りなんて、前の時でもあまり行ったことがなかった気がする。

 一人でお祭りを回っているのを見られたくなくて、ホントはみんなみたいに屋台を回って楽しみたかったのに、どうしても行けなかった。

 他人の目なんて気にすることなどなかったのに。

 本当に、考えれば考えるほど、私はもったいない人生を送ってきたのだなと実感する。

「じゃ、適当に買ってくるよ」

 そう言うと、串焼きにサンドイッチのようなものをテキパキとキースが買いに行く。

 両手いっぱいに荷物を持つ姿に、慌てて駆け寄る。

 するとキースに瓶に入ったサイダーのようなものを持たされた。