まるで宝石でも眺めるように二つのプリンを見つめた後、受け取ったスプーンでプリンを食べ始める。

 それを確認してから、私も食べ始めた。

 やや固めの素朴なプリンだ。

 よく流行っているやわらかいプリンは作り方を知らないので、私はお菓子はこれしか作れない。

 家で料理を作るということがなかったので、高校の時に家庭科の授業でやったものくらいしか作れないのだ。

 こんなことになるなら、もっといろいろな物の作り方を覚えておけば良かったと思う。

 今になっては、ここでは食べれないものばかりだから。

「これは確かにお酒の風味が効いていて、おいしいな。初めて食べたが、これはクセになりそうだ。手間でなければまた作ってきて欲しい」

「これぐらいでよければ、また……」

「ああ、頼む。さて、小腹を満たしたことだし、街に出るとするか。お昼ご飯のお詫びもかねて」

「でも、まだ書類が残ってますよ」

 私の方の簡単な書類は片付いたものの、キースの執務机の上にはまだ三分の一ほど書類が残っている。

 今出かけてしまえば、その書類をキースが帰ってからやれなければならなくなってしまう。

 そうなれば、仕事が終わるのは何時になることか。