瑞葉と瑞希だった頃、いつも瑞希はクラスの中心にいた。

 同じ顔なのに、引っ込み思案の私とは違い、よくしゃべり、よく笑い、たくさんの友達に囲まれていた。

 最初こそ頑張ろうと思っても、いつも瑞希のペースに飲み込まれ、私はひとりぼっちだった。

 でもそれだけなら、まだ気にすることはなかった。自分の性格が悪いと諦められたから。

 現実はそうではなかった。

 瑞希はいつでも、一人で可哀相な私の元に友達を連れてきた。

 わざと自分と私とを比較させることで、優越感を味わうように。

 だから本当は高校だって、同じところになんて行きなくなかった。

 そのために受験勉強を頑張ったというのに、あっさり推薦で同じ高校へ入って来た。

 その頃から、家で過ごすことも苦痛になって来た。

 母は瑞希にべったりで、相変わらず父は家のことに無関心だったから。

「そう考えると、今はまだ幸せだ」

 ベッドに寝転ぶ。父と母との関係は良好だし、ミアにはグレンがいる。

 このまま父の言うようにミアの関心がグレンに行けばいいのに。

 でも、なんとなくそうはならない気がする。私がミアに、瑞希に何をしたというんだろう。

 ともあれ、キースに屋敷まで来てもらうのはまずいことには変わりない。

 明日朝一番に手紙を書こう。妹が婚約式の用意で忙しいため、他の場所でお会いしたいと。

 そこまで考えると、体温がゆっくりとベッドに吸い込まれるように広がっていく。

 このまま寝たら、朝ルカに怒られるだろうなと思いつつも、眠気には勝てず瞼が重くなっていった。