「侯爵家としては、娘が王妃となるということは、これほどない名誉なことだとは思う。だがお前の父としては、何もそんな苦労することが目に見えている所へなど行かせたいとは思わない」
侯爵家の立場としては、王家が望むのならば娘を差し出すのが普通だ。
本来なら、こちらに拒否権など存在しない。
しかし、キースはちゃんと父に許可を取ろうとしてくれた。
それが当たり前であるかのように。
そして父も、父としての意見をキースに言ってくれた。
それだけでも、みんな私のことを考えてくれていることが分かる。
「お父様」
「お前はまだゆっくりでいいと思う」
「ありがとうございます。そうですね……全部、グレン様が悪い」
私はその結論へ至る。
こうなるなら、さすがに前もって情報を共有してくれてもいいはずだ。
そうすれば、もう少し心構えやキースへの接し方を考えたものを。
「……そうだな、全てマクミラン公のせいだな。今度我が家に来た時に、今日のドレスの件も兼ねてしっかり言っておこう」
「それだけでは足りませんわ。婿になったら、チクチクいじめてやって下さい」
そう言いながら私が笑うと、父もつられるように笑った。