うっすらと重い目蓋を開ける。

 生きている。そのことに驚きながら、私は体を一気に起きあがらせようとした。

「痛っ……たい」

 トラックに轢かれたのだから、当たり前か。

 しかし私の体のどこにも、包帯は見当たらない。

 それどころか、目の前にある自分の手は驚くほど白い。

 いくら今まで帰宅部だとはいえ、こんなにも肌が白かったことはなかったはずだ。

 白魚のような手というのは、こういうものなのかと感心してみた。

「……いやいや」

 何かおかしい。

 今寝かされているのは、天蓋の付いた白いベッドだ。

 よく見ればそこには細やかな金の刺繍が贅沢に施されている。

 ここは明らかに、私が知っている病院というものではない。

 しかも誰かの家ということにしても、造りが日本のそれとは全く違う。

 辺りを見渡すと、さらりと髪が揺れ視界に留まった。

 サラサラとした艶のあるやや落ち着いたアイスブルーのストレートヘア。

 手に取れば、それが自分の髪なのだと改めて自覚する。髪の長さは腰の辺りまであるだろうか。

 白いリネンの上に広がる様は、まるで波打つ海のようにさえ思えた。