「んー、そういうことではなくてね。君から見て、グレンはどんな人物なんだい」
「頭がよく切れて、物事への探求心がとてもある方ですわ」
「いやね、君たちがとてもよく似ていると小耳に挟んだもんでね。本当は恋人ではないかと思っていたんだよ」
「まさか。私、あそこまで不愛想でもないですし、性格も悪くないですわよ。あんな腹黒メガネが恋人だなんて、心外もいいところですわ。だいたい、何につけても細かいし、根に持つし……」
「くくくくくっ。まさか、貴女からそんなことを言われてるなんて。腹黒メガネか、これはいい」
よほどツボなのか、踊りながら上機嫌だ。
「今日一番の楽しい話だな。しばらくこの話題で笑えそうだ」
少し、言い過ぎただろうか。
でも、妹の婚約者であるグレンと恋人だと言われ、思わず言い返してしまった。
もっとも、近くで見てきた私が言うのだから、ほぼ間違いはないと思う。
やっとの思いで、踊りきると礼をした。
これで失礼させてもらおうと思った時、グレンがやって来た。
そういえば、誰にも引っかけられないように釘を刺されていたな。
それなのに、私は殿下と中央で踊っているなど、嫌味が飛んでくるに違いない。
そう思っていた私にかけられた言葉は意外なものだった。