あー、断りたい。本気で嫌だ。

 ダンスは元々得意ではないのだ。し

 かし、前回の不敬罪の件もあり、これ以上印象を悪くするのは得策ではないことは分かる。

「私、あまりダンスは得意ではないのですが、それでもよろしければ」

 私はしぶしぶ手を握り返す。周りの人がどこか落胆したようにも見える。

「光栄だ」

 殿下に手を引かれ、広場の中央に出た。

 端っこでいいのにと思いつつも、殿下と踊るという時点で端という選択肢はないのだろう。

 ゆったりとした音楽から、やや早めのテンポの曲へ切り替わる。殿下に合わせ、必死に足を動かす。

「一つ聞いてもいいかい?」

 余裕な殿下が声をかけてくる。

 おそらく踊っていれば、二人の会話は他の人間には聞こえないだろう。

 しかし、私はこのステップに付いていくのに必死だというのに、なんとも恨めしい。

「はい、殿下。私でよろしければ」

「君とグレンの関係は何だい?」

「グレン様ですか? 妹の婚約者ですが」

 急に何を聞くのかと思えば、なぜここでグレンの質問が出てくるのだろう。

 なにかを探るような殿下の顔。

 グレン、何したんだろう。

 しかしその真意が分からない以上、自分が思ってることを話すしかない。