「こんなに美しいお嬢様なら、きっとたくさんの方に言い寄られてしまいますわ。今日の主役はソフィア様で間違いありません」

「んー。それはどうかしら。頑張って、愛想よくだけはしないと、お母様の顔もあるからね。そろそろ時間だし、とりあえず、ホールに行ってお母様の仕度が出来るのを待ちましょうか」

「そうですね、それがいいと思います」

「上着はいらないかしら」

「行き帰りは馬車ですので、大丈夫ではないですか」

「それもそうね」

 そう言いながら、ルカと玄関のホールに向けて歩き出す。

 10センチはあるだろうヒールは、なかなか歩きづらい。

 そしてどうしても短い裾が気になって、いつもより歩幅が狭くなってしまう。

「あら、お父様、今お帰りですか?」

 玄関ホールには母ではなく、今帰宅したばかりの父がいた。私を見て、父が一瞬固まる。しかし、それも一瞬のことで、すぐに眉間にしわを寄せた。

「なんだ、そのドレスは」
「なんだって……グレン様にいただいたものですが、どこかおかしいでしょうか」

 別に私だって、好き好んでこのドレスを着ているわけでもないのに、その言いようはないだろう。

 似合わないからといって、何もそんな言い方をしなくてもいいのに。