グレンもミアもあの日の私の姿を見ているだけあって、さすがにあれを着るのは気まずい。

 そうなると、ほとんど着るものがないのだ。

 こんなことならば、ちゃんとルカの言うように令嬢として最低限の枚数のドレスは持っておくべきだったなと、少し後悔する。

 衣装棚をいくら眺めても、今日の夜会に着ていけそうなドレスは見当たらない。

「ま、既製品で何とかするしかないわね」

「ソフィアお嬢様ー!」

「ルカ、ノックもなしにいきなり入ってきたら、びっくりするじゃない」

 息を切らしながら、大きな白い箱を抱えたルカが部屋に飛び込んでくる。

「申し訳ありません。ですが、グレン様からお嬢様たちにこれが届きまして」

 ルカは抱えていた箱を、ベッドの上に置いた。白い箱に金の模様の絵が描かれた箱に、赤いリボンがかかっている。

「私とミアに届いたってこと?」

「そうなんですよ。ミア様はご自分のだけではないことに、とても腹を立てていたようですが、奥様からこれをさっと受け取って、急いでお持ちしました」

 褒めてくださいと言わんばかりのルカの笑顔がかわいらしい。

ありがとう、ルカ。でもグレンからなんて、一体何かしら」

 リボンを解き、箱を開けると1枚のメッセージカードが入っていた。『今日はとても大事な人に会わせたいので、これを着てきて欲しい。 グレン』

「これを着てきてくれって、私はあなたの女でもないのよ。まったく……それは、ミアも怒るでしょうね」

「でもソフィアお嬢様、ドレスに罪はないですから」