私は何も言われていない。

 母親に誘われることも、予定を尋ねられることもなくなったのは、いつの頃からだろうか。

 当時はあまりの悲しさに、よく一人で隠れて泣いていた。

 そんな時期すらも通り越してしまえば、なんとも思わなくなるのだ。

 私は家族の中の空気でしかない。ただ、そこにいるだけ。

 それでもタダで居させてもらっているのだから、文句を言うわけにいかない。

 高校を卒業するまでは。

 成績がいくら良くても、大学まで行く気はない。

 元より興味がない私の進路など、両親は気にすることはないだろう。

 だからこそ、高校を出たら家を出て働くつもりだ。

 そうすれば、やっと解放される。それまであと少しだ。

 やっと自由になれるんだから。だからもう、大丈夫。きっと大丈夫。

 そう自分に言い聞かせた。