さすがにイラっとした私がルカに言葉を返したのだが、どうやら向こうにも聞こえていたようだ。

 無関心だった母が、鼻で笑っている。

 ここまでくれば、売り言葉に買い言葉だ。

 前までの私なら言い返すことなど、絶対にしなかった。

 だからと言って、ずっと我慢しているのにも限界がある。

 喧嘩を買う気はこれっぽっちもなかったのだが、これ以上突っかかるってくるならば、話は別だ。

「あら、ごめんなさい? 低俗なのがうつると言った方がよかったかしら? あまりに聞きなれない言葉ばかり言っていたもので」

 口元を抑え、小首をかしげながらニヤリと笑う。

 一度やってみたかったのよね、ミアの真似。やっている自分が笑い出すのを必死にこらえる。

「なんなの、あんた一体、何様のつもり」

「いい気になっているんじゃないわよ」

「嫌だわ。このお店はいつから動物小屋になったのかしら。だいたい、何様って、自分たちは何様のつもりなのかしら」

 彼女たちのキーキーと叫ぶ大きな声を聞きつけたのか、すぐに数名の店員が下からやって来る。

「どうされました、お客様。わたくしは、オーナーのワイズと申します」

 オーナーと名乗る人物が、真っ先に母の元へ駆け寄る。

「ここは静かだったから、とても気に入っていたのだけど、ホント残念ね」