この子にあって私にないものはなんだろう。

 私はいつも鏡を覗いてはそんなことばかり考えていた。

 髪型など同じにしてしまえば、親でも見分けはつかない。

 それなのに友達もほとんどいない帰宅部の私と、活発でテニス部の瑞希。同じようでそのすべてが全く違う。

 別に羨ましいわけではない。そう、羨ましくなんてない。

 私は、私がしたいように生きているのだから。いつものように、そう言い聞かせた。

「ねぇ、夏休みはどーするの? また図書館?」

「別になんだっていいでしょ」

「何だって良くないよー、家族なんだし。そうそう、母さんが、今年は花火が見える旅館に泊まりたいって言っていたの知ってるぅ?」

「……」

「あれー、母さん、姉さんに言うのを忘れたのかなぁ。もう1ヶ月くらい前からずっと言っていたのに」

 クスクスと笑う瑞希の声に、かばんを持つ手に力が入った。

 それでも、絶対に表情は変えない。

 この16年で覚えたことだ。

 どんなに嫌なことであっても、悲しいことであっても、表情を変えれば、惨めになるのは自分だから。

「そう……」