―コンコンコン

 やや手早く短いノックの後、ルカが入室してくる。

 外を見れば、薄ぼんやりとしていた空を追い上げるように、朝焼けが目に染みる。

「ソフィアお嬢様、もう起きていらしたのですか?」

「ええ。ルカ、昨日は当たってしまごめんね。朝早く目が覚めてしまったから、ちょうど手紙を書いていたのよ」

「手紙ですか!? まさか、遺書なんてことは」

「ルカ、やだ、やめてよね、おかしい」

「お嬢様、冗談ではないのですよ」

「分かっているわ。お世話になった学園の先生たちに、最近はどうですかとご挨拶のお手紙を書いていたのよ。卒業してから、なんだかんだと書く時間がなかったから。そんなに怒らないで、ルカ」

 真顔で心配するルカを横目に、ケタケタと笑いがこみ上げてくる。

 まさか、そこまで思い詰めていると思われていたとは思わなかった。

「お嬢様、ルカがどれほど心配したと思っているんですか」

「そうね、笑って悪かったわ。でも言ったでしょ、グレンの事は何とも思ってないって」

「でも、ソフィアお嬢様、昨日……」

「んー、そうね……。ミアに親友を取られたという意味では少し凹んだわね。でも、本当にそれだけよ。むしろ、今はやることがいっぱいになってしまったわ。二人が結婚をしたら、みんな領地へ戻るでしょ。それまでに私もどうするか考えないとね。そのために、まずいろんなことを学んだり、知ろうと思うの。ルカも協力してくれる?」

「ソフィアお嬢様、ルカは何でもお嬢様の力になりますから言ってくださいね」

 目に涙をいっぱいにため、何度も頷く。