ルカの言っていたことが、本当に当たってしまったようだ。

 婚約。いくら言われても実感はない。でも、これが普通のことなのだろうか。
 
しかし手紙を読む父の顔が、一瞬陰った。そう見逃してしまうくらいのほんの一瞬、眉間にシワが刻まれる。

「?」

 父はやや考えるように停止した後、手紙を母に渡した。

 手紙を渡された母は、父の行動が分からないままも、受け取って読み出す。

「許可いただけますか?」

「……、ああ、もちろんだ。ミアとの婚約は許可しよう。すぐに公爵様へのお返事を書くから、待っていてくれるかね」

「はい、ありがとうございます」

「いやいや、お礼を言いたいのはこちらだよ。うちには息子がいないから、君がこの侯爵家を継いでくれるなら、とてもうれしい限りだよ」

「グレン様、本当ですの? ミアを妻にして下さいますの?」

 涙を目にいっぱい貯めて、ウルウルとさせながら、ミアは隣に座るグレンの手に自分の手を重ねる。

「正式なプロポーズはまた別の場所でさせてもらうけれど、これからは僕だけを見つめて欲しい。この婚約を受けてくれるかい?」

「まぁ、グレン様。もちろんですわ」

「おめでとう、ミア。早速、ドレスの準備をしなければね」

「はい、お母様」

 幸せそうな家族風景だが、そのイマイチ会話が私の中には入っていかない。

 別に元々、私が婚約を申し込まれる予定だったわけではない。

 ただ、周りがそう思っていただけ。なのに、なぜこんなにも息苦しいのだろう。

 そうだ、この感じは瑞葉の時にも感じたことがある疎外感に近いのかもれない。

 瑞希を何よりかわいがる母に、仕事ばかりであまり家庭を省みない父。

 そして自分がすべてにおいて中心ではないと気が済まない双子の妹。

 あの光景に、すごく似ているんだ。