客間には、すでにグレンもミアも両親も集まっていた。

 どうやら私が最後だったらしい。そのため、全員の視線が一斉に突き刺さる。

 ただその表情は様々だった。ミアは目を細め、露骨に嫌な顔をし、母は合格だったのかにこやかだ。

 父は相変わらず、何を考えているのか読み取れず、グレンはやや驚いたような表情をしていた。

「遅くなりました」

 予定の時間より早かったはずだが、一応詫びる。

「いや、僕が早かったんだ。悪かったね。それより、ソフィアはまた一段と綺麗になったね」

「えー、グレン様、ミアは?」

 グレンの横の席をすでに陣取っているミアは、口を尖らせた。

「ミアは、いつでもかわいいよ」

 その言葉を聞いたミアは満足げにほほ笑むと、横目で私を見た。

 しかし、私はその視線に気づかないふりをして、そのまま母の隣に座る。

 和やかなはずのこの雰囲気の中で、異様に居心地が悪いのはたぶん私だけなのだろう。

 私が席に着くと、見計らったかのようにお茶やそれに合わせたケーキやなどのお茶菓子が運ばれてきた。

 談笑する彼らを横目に、一人黙々と食べ進める。

 父は今まで見たことがないくらい、上機嫌だ。

 次期宰相候補であり、ましてや身分もうちより高い公爵様の次男からの大切な話ともなれば、ルカではないが期待しているのだろう。

「侯爵様、今日僕が面会を申し込んだ理由は、婚約の願いを聞いていただきたいと思いまして」

「まぁ」

「そうか、そうか。それは、うれしい限りだ」

「では、これを」

 グレンから婚約の申し込みの手紙を受け取った父は、満面の笑みだ。

 そして、その顔をちらりと私に向ける。