そう言いながら、わたしを囲んでいた輪が離れていく。

 帰ったら、母と瑞葉に頼み込まないといけない。

 母はわたしの我儘を気に留めることはないと思うが、瑞葉はまたとても怒るだろう。

 でも仕方ない。

 こんなことでこの輪の中心としての立場を失うわけにはいかないから。

 例え、見せかけだけのものだとしても。


「瑞希、大丈夫?」


 後ろの席に座っていた子に声をかけられる。

 この子は幼稚園からずっと一緒のいわゆる幼馴染だ。

 とはいっても、ただ一緒だったというだけで取り分け仲がいいというわけではない。

 もちろん悪いわけでもないのだが、ずっと一緒なだけに逆に、距離感はつかめない。


「ん? なんで? もちろん大丈夫だよ」

「……それなら、いいんだけど……。何かあったら……」

「……」

「ううん、なんでもない。また、夏休み明けね」

「うん、また休み明けねー。ばいばーい」


 作り笑いで全てを覆いつくす。

 疲れた。家も、教室も。

 いつだって、わたしは求められる誰かを演じているだけ。

 これはこの苦痛はいつまで続くのだろう。