「でもそれは、私のことが書かれているのでしょう。それならば、私にはそれを知る権利があるはずです」

「この件は熱が下がって、落ち着いてからにしよう。今はとにかく休むんだ、ソフィア」


 キースの手が横になったままの私の頬に触れた。

 とても冷たい、冷え切った手。

 その手とは真逆でキースの心が熱く、とても怒っていることは分かる。


「それでは遅いのではないのですか?」

「……」


 もしミアが私を殺そうとしていたということが明らかになったとしたら、貴族への殺人未遂はどんなに軽くても国外追放だ。

 私がここにいて寝ている間に、何も知らぬ間に、全てが終わるなんて絶対にダメだ。


「グレン、お願い答えて。いくら日が浅かったとしても、もう愛想が尽きてしまったとしても、ミアは確かにあなたが愛しているといった人よね?」

「……ああ、そうだ……」

「グレン!」

「キース様、お願いです。これは、この件の当事者は私とミアです」

「ソフィア、僕はずっと気になっていて、君が乗っていた侯爵家の馬車が転倒した事故のことを調べていたんだ。手入れを怠っているわけでもない馬車の車輪が損傷して事故を起こすなんて、どう考えてもおかしいだろう」