「今、帰り道にキース様に付けていただいたの。どう似合うかしら」

「ええ、とっても……。キース様に付けていただくなんて、それは良かったですわね、お姉さま」


 平然とペンダントを身に付けている私に、ミアは露骨に顔を顰める。

 こんな風にペンダントを受け取って身に着ける余裕のある私を、見たかったわけではないはず。

 だからあえてそれを、逆手に取ったのだ。


「ずいぶん幸せそうですね、姉さま」

「ええ、もちろんよ。何が……誰が大事なのか、よく分かったから。今日、キース様の求婚を受けることにしたの。それもこれも、全部あなたのおかげよミア。あなたが私に、分からせてくれたから」

「姉さま、それはわたしに対する嫌味ですか」

「なに言っているの。これは、本心よ。だってそうでしょう? 私に、欲しいものは欲しいとちゃんと言わないとダメだって、あなたが教えてくれたんだもの」

「なんなんですか、それ」


 机をバンっと叩き、ミアが立ち上がる。その顔は今までの余裕など微塵もない。


「今まで、姉さまはわたしのことなんて見向きもしなかったくせに。なんで今になって、そんな目でわたしを見るのよ!」

「ミア、あなたの言ってる言葉の意味が私には分からないわ」

「姉さまはグレン様より地位の高いキース様と結婚することで、わたしに勝ったって言いたいんでしょ。わたしのこと、見下してそれで満足なのですか」