ゆったりとした二人だけの時間が過ぎ、馬車が家にたどり着く。

 キースの手を借り馬車を降りると、報せを受けたのかルカの姿があった。

 いつもと違い落ち着きのないルカは、ソワソワしたように手をこすり合わせている。


「お嬢様ー」

「まあルカ、お客様の前よ」


 馬車を降りてきた私にルカが泣きながら駆け寄った。そしてそのままの勢いで、私に抱きつく。


「申し訳ございません。ですがルカは」

「ええ、分かってるわ。心配してくれてありがとう」


 取り出したハンカチでルカの涙拭った。

 ルカだけではなく、父と母も心配していることだろう。

 あまり無茶をしないようにしないと。

 でも申し訳ないと思うと同時に、やはりそんな優しさがうれしく感じる。


「侯爵へ話したいことがあるのだが」

「はい。旦那様からも、もし殿下がお見えになるようなら書斎へご案内するように賜っております」

「お父様が、キース様に?」


 何の話だろう。いくら父でも、王弟殿下であるキースに苦言を呈すことはないと思うのだが。


「あの、それよりも今ミア様が戻っておいでになられて……」

「ミアが? しばらく領地にて謹慎となったはずなのに」